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■医療用マイクロ無痛針  ■中空管マイクロポンプ  ■固体電極微小pHセンサ

■高機能圧電材料の開発

◆2018年度学生テーマ一覧  ◇過去の学生テーマ

■医療用マイクロ無痛針
 現在の医療用注射針は、針の外径が0.4~1.2mmと非常に大きく、刺した時に皮膚組織を破壊するため、患者に肉体的および精神的苦痛を与えている。献血用の注射針は特に外径が大きく外径1.2mmである。また、注射針の材料として剛性、強度、耐食性に優れているSUS304が用いられていが、主元素の鉄には人体細胞に対して毒性があるため生体適合性という点で問題がある。もし刺した時に痛くなく人体に無害というような針が存在するならば素晴らしいと考えます。そこで本研究では、「低侵襲」と「生体適合性」を満足する医療用マイクロ針の創製および血糖値計測用マイクロマシン(Bio-MEM)の開発を目標にしています。本研究で創生する医療用マイクロ針は生体適合性を満足し、雌蚊の針のサイズと同程度であり外径が50μmと非常に小さい。この医療用マイクロ針は引抜きなどのトップダウン方式ではなく、原子一つ一つから積み上げるボトムアップ方式を利用します。その中の1つとして、スパッタリングで創製していきます。図からも分かるように、従来の注射針の中に入ってしまうほどの大きさです。

■中空管マイクロポンプ
 近年、マイクロマシン・MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用い、化学的・生化学的な分析を小さなチップ上で実現する、μTAS(Micro Total Analysis Systems)や、Lab on a Chip等のマイクロ流体システムの開発が注目されています。しかし、一般的なマイクロ流体システムは、流路とポンプが独立して構成されているため、システム全体としての小型化が容易ではありません。そこで本研究室では、液体を輸送する流路とポンプを一体化した中空管マイクロポンプの開発を行っています。中空管マイクロポンプは、電圧を印可することで変形する特殊な材料、圧電材料を、図のように管の外周上に配置して、それらをミミズの蠕動運動のように駆動させることで液体を搬送します。この技術は中空管であればどのような物にも応用することが出来、例えばスパッタリングと呼ばれる方法を使って圧電材料を細い注射針の上にコーティングして駆動させる事で、針と注射器が一体となった採血システムを実現する事が出来ます。さらに、大きなスケールの応用例として中空管マイクロポンプの技術を応用した補助人工心臓の開発も行っています。一般的に使われている補助人工心臓の多くは、血液が人工物に触れる非生理的な接触により、血液が凝固してしまい脳梗塞などを引き起こすといった問題が存在しますが、圧電材料を血管上に装着して、血管自体を蠕動運動するポンプとして機能させることでこの問題を回避することが可能です。この時、圧電材料を予めC型の形状に加工しておく事で血管を切ることなく装着が可能になりますが、切り欠き部分によりその変形はより複雑になります。そこで有限要素法と呼ばれるシミュレーション技術を用いて、その変形挙動を確認すると共に最適化を行っています。   

■固体電極微小pHセンサ
 近年、体内や細胞内外といった微少な領域のpH値(酸性や塩基性の度合い)の変動が注目されています。例えば、ストレスや疲労を感じた際に唾液のpH値が変動したり、細胞が病気になった際に細胞内外のpH値が変動したり、といったことが挙げられます。これらのようなpH値の変動を連続的かつ正しく測るためにはセンサーが必要となります。pHセンサーには、pH値が異なる場合に電圧が変動する作用電極と、一定の電圧を発生し続ける参照電極から構成されています。一般的に使用されているpHセンサーは両電極ともにガラス管及び内部液を使用しているため、形状の自由度が低く、小型化が困難となっております。そこで、本研究室ではガラス管も内部液も必要としない、固体材料から成るpHセンサーの開発を行ないました。特に本研究室で開発されたヨウ素酸銀電極は、今まで開発されてこなかった固体の参照電極となっております。例えば、このヨウ素酸銀の粉を小さな型の中に押し固め、成型することで小型かつ壊れにくいチップ状の電極となります。このような電極を作ることでカテーテルに搭載し、体内のがん細胞のpH値を測れたり、口の中で唾液のpH値を測れたりすることが出来ます。また、スパッタリングと呼ばれる材料の薄い膜を形成する技術を用いてヨウ素酸銀を基板上や針上にコーティングすることで、より小型なpHセンサーの作製が実現します。例えば、基板上にpHセンサーを形成することでマイクロ流体デバイスと呼ばれる細い流路を有するデバイスをpHセンサー上に設置することができ、そこに流れる細胞表面のpH値などを測れ、また針上にpHセンサーを形成することで細胞内や生体組織内に直接刺してpH値を測ることが実現可能となります。

■高機能圧電材料の開発
 電圧を加えると変形し、変形させると電気を生じるといった機能を持った材料である圧電材料は、マイクロマシン=MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の分野においては小さなセンサーやアクチュエーターを作るため使われています。また、身近な例としては、電子式ライターの火花を発生させたり、スピーカー振動させるために使われたりと、既に私たちの生活に欠かせない材料の一つとなっています。このように、様々な分野で用いられている圧電材料ですが、現状その性能は十分とは言えません。そのうえ現在主流の圧電材料は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の鉛を含む物多く、環境への影響が懸念されていますが、鉛を含まない圧電材料の性能は鉛を含むそれと比較して及ばないのが現状です。よって、圧電材料、特に鉛を含まない材料の性能向上は非常に重要なテーマです。
 下の図はペロブスカイト型と呼ばれる結晶の形で、多くの圧電材料がこのような形になります。ここで、図のBサイトと呼ばれる部分にある原子の一部を、別の原子で置き換えてやる事で圧電材料の性能が向上することが知られています。よって、圧電材料の性能向上について多くの報告がされていますが、そのほとんどが沢山の組み合わせを実験で試行錯誤した産物であり、金銭的・時間的な負担が大きなことが問題です。
 そこで私たちの研究室では第一原理計算と呼ばれる原子のシミュレーションを用いて全く新しい圧電材料の探索を行っています。第一原理計算は純粋な理論に基づいたシミュレーションですので、結果の信頼性が高いことに加え、様々な材料の組み合わせをコンピューター上でコストをかけずにすばやく評価することが可能です。加えて、MEMSデバイスへ圧電材料を搭載する際には、材料をうすい膜状にする薄膜化が行われますが、その際に材料に生じる影響を原子の並び方から見積もるなど、全体を通した圧電材料の設計手法の確立を目指しています。   

◆2018年度学生テーマ一覧

●マイクロ流体デバイス内血中循環腫瘍細胞用pHセンサの開発
 近年、癌による死因の約90% は血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells: CTC)による癌の転移であると言われている。癌マーカーであるCTCの検出において決定論的横置換法(Deterministic Lateral Displacement: DLD法)による細胞腫毎の濃縮が可能となっている。本研究ではDLD法によって濃縮されたCTCを流路内で直接的に検出可能とする、固体から成るpHセンサの開発を目的として、AgIO3およびSbの二種の固体材料を用いた薄膜電極の開発を行っている。

●P(VDF-TrFE)を使用した貼付型センサの開発
 既存の睡眠時無呼吸症候群の診断では複数のセンサを患者の身体に取り付け測定を行う。複数のセンサを取り付けることは患者に対してストレスなどの負担となる。そのため、ストレス低減のために単一で高精度な測定が可能な貼付型のセンサの開発が必要である。そこで本研究では貼付型のセンサの材料として圧電材料であるP(VDF-Tr FE)をしようし、ナノシートの成膜を行いせいまくしたなのしーとの圧電性の評価を行う。

●高分子を用いた貼付型熱中症用高精度pHセンサの開発
 近年、地球温暖化により熱ストレスが起こりやすくなり、熱中症患者が増加傾向にある。従来の熱中症予防として、熱環境計測機を用いた熱中症計が存在しているが、気温・湿度・輻射熱から算出される暑さ指数によって熱中症のリスクを表示しており、個人差が考慮されていない。そのため、熱中症を直接的に測定可能なセンサが必要とされている。本研究では、熱中症のうち、熱疲労と熱痙攣の症状で多量に汗をかくことによって、平常時よりも汗pHが塩基性に傾くことに着目した。汗pHを測定対象とする貼付型ナノシートpHセンサの開発を行っている。センサの構造としては、PDMSナノシート上に固体電極であるAg/AgIO3とSb/Sb2O3を成膜した構造となっている。今後の展望として、創製された貼付型ナノシートpHセンサの実用化を目的とし、pH測定によるセンサの評価を行う。そして実際に人の身体に貼付し、汗pHの測定を行い、汗pHの評価指標を設定する。

●トンボ型羽ばたき飛行ロボットの姿勢制御のための可動腹部制御
 近年、災害が発生した場合における狭所の情報収集や、通常時に橋梁点検等で人が立ち入れないような場所においてドローンが広く求められています。しかし全長10cm以下の小型の物体には寸法効果による強い粘性が働くため、小型化に伴い既存のドローンでは飛行が困難になることが知られています。そこで小型で飛翔可能な昆虫に着目し、中でも高い飛翔能力を持つトンボを模倣した小型飛翔ロボットの開発が行われています。しかし現状では飛翔開始直後、姿勢を維持できず失速し墜落してしまう為、羽ばたきによる飛翔能力を損なわず軽量かつ低エネルギーで駆動可能な姿勢制御装置の開発が必要です。そこで本研究では軽量かつ小型化が可能である形状記憶合金を用いた尾部姿勢制御装置の開発を行っています。超小型形状記憶合金を対抗に組み合わせ、通電することによって形状記憶合金自体が発熱し縮むことによりトンボ型小型飛翔ロボットの姿勢を行います。これにより安定した飛行ができることを目指しています。



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Department of Precision Engineering Tokai University